- 愛のかたまり(12) -



「俺、俊さんに好かれてると思っていいのかな?」
まだ疑わしげな眼差しを向ける南央に、つい熱がこもる。
「好きだよ。僕はとっくにナナを好きになっていたよ」
気を抜けば、自分の定めたボーダーを軽く越えてしまいそうになるほどに。
「……でも、何もしないの?」
「忍耐力が持つ限りは、そのつもりだけど」
尤も、いつまで自制心がもつのか甚だ怪しくなってしまっているのだったが。
「卒業したら、また3年、先に延ばすの?」
「あと1年9ヶ月が我慢できそうにないのに、その先3年も延ばせるかな……」
自嘲する俊明の心情など想像することもできないのか、南央はまた大人びた表情で感情を隠そうとする。
「ナナはまだ別れようと思ってるのかな?」
「俺の忍耐力が持たなかったら、そうなるのかも」
「だめだよ、“やっぱり嫌”は聞かないと言ってあったはずだからね」
こんな日が来るかもしれないと予測できたから、最初に“俊明の本気につき合えるか”確認を取っておいたのだった。いくら南央が、思っていた以上に子供だったとわかっても、約束を反故にさせる理由にはならない。
「……それって、俺の意思では別れられないってこと?」
約束の本当の意味にやっと気付いたらしい南央に、大人げなく止めを刺す。
「そうだよ。“責任”を取る約束だったね?」
「責任って、そういう意味だったの……?」
ありえない、と言いたげな責めるような視線にも怯むことなく俊明は約束の履行を要求する。
「確認は取ったはずだよ?僕はもう、好きな人を手放すつもりはないからね」
俊明の言い分に納得はいってないようだったが、南央は約束を違えるつもりはないようで、挑発的に見上げてきた。
「……じゃ、俺も言っとくけど、最初の期限を越えたら知らないからね?」
脅かすような南央の言葉に、つい弱音が口をつく。
「そこまで持つかどうかも怪しいけどね」
一度触れてしまったからこそ、これまで以上に耐え辛くなるだろうということは予想に難くない。
それでも、出来うる限りの努力はしようと、俊明は当てにならない決意を新たにした。



- 愛のかたまり(12) - Fin

【 愛のかたまり(11) 】     Novel    


2009.12.20.update

軽く流して書くつもりだったのに、途中、俊明にどっぷり感情移入してしまいました……。
全体を通すと非常にバランスの悪い仕上がりになってしまい、反省しています。
というか、一番書きたかったのは、俊明も例に洩れず、大人げなくて粘着質で執念深いってことです。
(加えてヘンタイちっくだったり……。)