- Honey×Honey.4 -



「ゆいさんちって、よく山芋使うよね……?」
なぜ里桜が俯き加減に頬を赤らめているのだろうと不思議に思いながら、優生は一応の理由を話す。
「前に、淳史さんが毎日でも食べたいみたいなこと言ってたし、なるべく使うようにしてるんだけど」
夕食の下ごしらえをする優生の手伝いをする里桜とキッチンで並んでいるだけなのに、どういうわけか妙な雰囲気が漂ってくる。
「そうなんだ……ね、やっぱ、効果あるの?」
「何の?」
「やだ、ゆいさん、そんな真顔で」
「わからないよ、里桜ひとりで納得してないで、ちゃんとわかるように言って?」
強い語調で追求してしまった優生を、里桜は動物の柄のついた淡い黄色のエプロンの裾で口元を押さえながら、上目遣いに見上げた。
「……山芋って、精力つくんでしょ?」
「そうなの?栄養はありそうだけど……って、そういう意味じゃなくて、そっちの意味で?」
「うん。前に義くんがあっくんに勧めてるの聞いたことあるもん。それ以来、俺は義くんにはなるべく食べないでって言ってるんだ」
「そうだったんだ……」
頻繁に抱かれていないと不安に陥ってしまう優生に淳史が合わせてくれるようになった裏で、そんな努力をしてくれていたとは知らなかった。
根深い人間不信も、もう淳史に対しては発動しないのに。いくら大丈夫だと言っても頻度を落とそうとしないのは、淳史の方が優生を信用できないからなのだろうか。それとも、求められれば貪欲に欲しがってしまう優生が悪いのか。
「ねえ、ゆいさん?ていうことは、今晩はオッケーとか、そういうサインなの?」
小首を傾げて問う里桜の悪気のない言葉に、薄ら寒いものが背を走る。そういえば、と思わないでもなかった。
「違うから!俺、そんな話、淳史さんとしたことないし」
たぶん、を付けるべき所なのだろうが、力強く否定しておいた。話し合いの中で決まったことではなくても、暗黙の了解になっていなかったという保障はないのだったが。
「でも、効果はあるみたいだよね?」
いつになく鋭い観察力で見られていたことにうろたえながら、もう里桜の前では山芋を買ったり使ったりしないようにしようと心に決めた。



- Honey ×Honey.4 - Fin

Novel  



'08.10.12.update

毎度、品のない小話ですみません。
しかも今回は色気も皆無……。
この夜の工藤家は、また機会があれば。