- Honey×Honey.2 -



「ゆいさん、どうかしたの?」
つい、まじまじと里桜を眺めてしまっていた優生は、不思議そうに尋ねられて我に返った。
今日の里桜は衿の大きく開いたTシャツとショートパンツに、少し腰を絞ったロングパーカを羽織っていて、女の子のような出立だ。しかも、可愛らしい顔立ちにそれが違和感なく似合っているところが恐ろしい。
「前から思ってたんだけど……里桜の私服って女性用?」
「うん。俺、背が低いから男物だとサイズ探すの大変だし、気に入るのが少ないし」
女性物の洋服を着ることに何の抵抗もなさそうな里桜の方が不思議だと思うのに、当然のように返されると、優生の拘りの方が変に思えてくる。
「里桜は可愛い系の格好が好きなんだよな?」
「好きっていうか、俺は童顔だし、筋肉ついてないし、似合うのを選ぶとこうなるっていうか。ゆいさんは男物から探してるの?」
「うん」
「そうなんだー。ゆいさん細いから大変でしょ?大人のサイズだと、合うの絶対ないよね」
確かに、メンズ売り場に優生に着られそうなものは少ない。上着はともかく、下はサイズ直しをせずには着ることはまず無理だった。
「ゆいさんもだけど、あっくんも規格外だから大変だよね」
「他人事みたいに言うけど、そっちも大変なんじゃないの?」
「ううん。義くんも背は高いけど、規格外ってほどじゃないでしょ。細く見えるけど、意外とがっちりしてるし」
「そういえば鍛えてるよなあ……」
腕にしろ胸板にしろ、見た目より確りと筋肉がついていることは体感済みだった。大体、そうでなければスーツがあれほど似合うはずがない。
「……ゆいさん、何でそんなしみじみ納得してるの?」
「え……」
咄嗟にごまかす言葉の出てこない優生に、里桜は小さくため息を吐くと、取って付けたような笑顔を作った。
「俺にあっくんとベタベタしちゃダメって言うんだから、ゆいさんも義くんとくっつき過ぎちゃダメだよ?」
「うん……ごめん」
今まで気にした素振りを見せたことのない里桜に油断していたが、本当は思うところがあったのだろうか。
「だから、ベタベタしたくなったら俺にしてね?」
優生の心配とは少し違うかもしれない里桜の思惑に、ホッとしたのも束の間、その可愛らしさを裏切るいたずらな腕に捕まった。



- Honey×Honey.2 - Fin

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(2008.5.8.update)