- Honey×Honey.3 -



「え……ゆいさん?何で?」
転寝から目を覚ました里桜が、困惑顔で優生を真上から見下ろした。ソファで優生と昼寝をしていたことを、眠っている間に忘れてしまっていたらしい。
「何でって、何が?」
「やだ……」
優生の上に乗り上げているのは里桜の方なのに、まるで襲われたとでも言いたげに瞳を潤ませた。
「里桜?」
おそるおそる、優生の想像が外れていることを祈りながら見つめ返すと、里桜は頬を染めて俯いた。
「……勃っちゃった」
そういえば、少し前から、かなり切迫したものが当たっていたような気がする。
「ゆいさんが刺激するから……」
「俺のせいじゃないだろ、里桜が勝手に乗っかってきたんじゃないか」
「だって落ちそうだったんだもん」
いくら細身で小柄といっても、男二人でゆったり横になれるほどソファは広くない。おそらく、寝付きが良くて眠りの深い里桜は、義之の腕枕でベッドに入っているような気になっていたのだろう。
「とりあえず風呂でもトイレでも行ってくれば?」
「やだ……ゆいさん、一人で抜いて来いって言ってるの?」
真っ赤になって抗議する里桜の言いたいことを、優生は正しく理解することが出来なかった。
「俺に何とかして欲しいの?義之さんしか触っちゃダメって言ってたのに?」
「そうじゃなくて……お願いだから、少し離れてて?」
「手伝ってあげなくていいの?」
身を引こうとする里桜を、引き止めようとした手が邪険に払われる。
「もう……刺激しないでって言ってるのに。おさまんなくなっちゃうでしょ」
その余裕のなさに、つい意地悪したくなってしまう。
「や、ん」
内腿へと滑らせた手に、里桜の体が小さく跳ねた。顔を伏せる仕草がやけにしおらしく見えて、追い詰めてみたくなる。
「意地張ってても辛いだけだろ?気持ち良くなっちゃえば?」
「だめ、って、ゆいさん」
今にも流されそうな体と違って、里桜の気持ちは以前と同じく頑ななままだった。触れようとする優生の指から逃れようと、懸命に足掻く。
「手、のけて?」
里桜の抵抗を躱しながら、カーゴパンツのボタンに手をかける。悪ふざけが過ぎるかもと思いつつ、止められない。
まさか、玄関ドアの向こうに、仕事の途中で抜けてきた義之が来ていることなど知る由もなかった。



- Honey×Honey.3 - Fin

Novel  


(初出/2008.5.17)