- Bittersweet Honey -



「う……ん」
寝返りを打とうとする体を腕の中へ連れ戻す。身動ぐことさえ許せなくて、腕へ閉じ込めるように包み込んだ。
「……なに?」
不満げに洩れる声が、覚醒するにつれて明瞭になっていく。
「どうかしたの?」
窮屈そうに身を捩ろうとする優生に、何と答えればいいのか。
不安などという感情を、淳史は自分でも持て余していた。
「淳史さん?」
問いを重ねられて、淳史は答える代わりに優生の首筋へ顔を埋めた。長めの髪をかきあげて、唇で襟足を辿る。優生の声が聞きたくて、耳の後ろを吸う。
「も……何時だと、思ってるの」
言葉ほど、声に力はなかった。そのまま胸元までキスを降らせれば、あっけなく降参してしまうのだろう。
「優生」
「うん?」
高過ぎず、低くもない、耳に心地の良い声が甘えるように語尾を上げた。
「山菜飯が食いたい」
「……今から?」
「いや、明日でいい」
「まさか、そんなことを言うために起こしたの?」
優生の声に、険が籠もっていた。
「そういうわけじゃないんだが」
「いいけど……早く寝ないと遅刻するよ?」
「そうだな」
同意はしたが、明日も仕事に行く気などなかった。これからのことを話し合って、優生の両親に挨拶に行く予定を立てるつもりだ。もし優生の両親が形式を重んじるなら、結納を交わすことも考えなくてはならない。
「おやすみ?」
確かめるように優生が淳史の顔を覗き込む。
「おやすみ」
軽く唇を合わせて腕に抱き直す。
そのまま目を閉じる優生は、まだ淳史の言うことを本気に取っていないのだろうと思う。それでも、淳史はもう待つ気はなかった。
指に絡む細い髪をそっと撫でながら、優生の全てを淳史のものにする方法を考えた。


- Bittersweet Honey - Fin ( H18.11.19.up )

Novel


れすきゅー・ぷりーず6話の直後、のつもりで書いたのですが。
まだ7話の方向性が明確になっていないので、違う展開になったらごめんなさい。

……なりました(^^ゞ
どうやら明日はお仕事に行くようです。